
【Nvidia最新】デスクトップ向けGeForce RTXグラフィックボードシリーズ比較!

自作PCゲーマーに圧倒的なシェア率を誇るNvidiaのグラフィックボード「GeForce RTX」シリーズは、現在4000番台のモデルが最新となっている。今回の特集では2023年5月時点で最新のデスクトップ向けGeForce RTXシリーズをご紹介しているので、グラボの買い替えや購入検討にぜひ活用してほしい。
なお、記事前半と後半では、自作PC初心者ユーザーに向けてグラフィックボードの基礎知識および注意点について解説しているので、こちらも併読してほしい。筆者は自作PC歴8年の経験者で、これまでに4つの異なる時代に発表されたグラフィックボードを購入してPCゲームを楽しんできた。少しでも参考になれば幸いだ。
初心者PCゲーマーに送るグラフィックボードの基礎知識
ビデオカードとも呼ばれるグラフィックボードは、映像編集やGPUコンピューティング、ゲームやVRの描画に欠かせない存在で、内蔵されているGPU (Graphics Processing Unit)で大量のデータ処理を行う。CPUとは異なるアーキテクチャーとメモリ構造を持っている点が特徴で、幅広い分野で重宝されるパーツだ。
▲RTX 4090の心臓部「GPU (Graphics Processing Unit)」の画像。
CPUによっては内部にグラフィック機能が実装され、それで映像出力を行えるモデルも存在しているが、3Dグラフィックでグリグリと動く最新ゲームを高解像度のディスプレイで遊べる能力はないため、多くの自作PCゲーマーはグラフィックボードを別途買い求めて、自分のパソコンに搭載していくことになる。
GPUの世界で長年ライバル関係にあるのがNvidiaとAMD(Advanced Micro Devices)の2社で、最近はIntelもオリジナルグラフィックボード「Arc」を発表して参戦しているが、世界的に高い業界トップのシェア率を誇るのはNvidia。特にPCゲーマーに向けたGeForceシリーズが有名で、RTXはその最新バージョンだ。
▲RTX 4090のファウンダーズエディション。カードの厚みが凄い。
今回ご紹介している「RTX」は、光の反射や影の表現をより現実的に再現するための最新技術「リアルタイムレイトレーシング(Real-Time Ray Tracing)」を搭載しているシリーズで、AIを活用したディープラーニングや高パフォーマンスが特徴。前シリーズである「GTX」から大幅な性能向上を果たしている。
ファウンダーズエディションと各社独自モデル
Nvidiaは通常新たなGPUを発表後、「ファウンダーズエディション(Founders Edition)」と呼ばれるリファレンスモデルを製造する。このモデルはレビューを行うメディアに貸し出されることもあるため、記事でその外見を見る機会も多いが、近年は製造数が少なく、発売直後のタイミングを除いて入手できる機会は少ない。
▲RTX 4090のファウンダーズエディション。カッコ良いが現在は入手困難だ。
世界中のPCユーザーに多く出回るのは、ファウンダーズエディション発表後に一般販売される各パートナー企業のオリジナルデザインモデルで、各社は同じGPUを用いながらも、独自の冷却機構やチューニングを施し、ライバル会社との「違い」を出した製品を発売する。量販店で販売されているモデルがこれだ。
現時点で存在するデスクトップ向けのRTXシリーズグラフィックボードを性能が高い順番に並べていくと、「RTX 4090」「RTX 4080」「RTX 4070 Ti」「RTX 4070」「RTX 4060 Ti」「RTX 4060」となる。なお、「RTX 4050」は現在ノートPC向けにしか存在していないGPUなので、本特集では除外している。
また、今回の特集では各社が送るグラフィックボードには直接触れず、元になっているGPUのデータを基準に記載している点をご了承いただきたい。基本的には各メーカーがこの基本性能を底上げしたオリジナルモデルを製造販売しており、同じGPUでもデザインや販売価格、製品の大きさなどに大きな違いがあるぞ。
デスクトップ向けGeForce RTXグラフィックボードシリーズ比較
1.「RTX 4090 (参考販売価格約26万円〜36万円)」
2022年に発表された「Ada Lovelace アーキテクチャー」を搭載するRTX 4000台シリーズの最上位モデル。第4世代のTensorコアと第3世代のRTコアを実装し、前モデルであるRTX 3090から飛躍的な性能向上を実現。製造プロセスが前世代の半分となる「4nm」へ進化したことがブレイクスルーになった。
▲現時点でグラフィックボードの頂点に立つウルトラハイエンドモデル。
メモリタイプは「GDDR6X」で容量は24GB。ブーストクロックは2,52GHzとなっている。GPUの性能を推し量る上で大きな意味を持つCUDAコア数は16,384基で、これは前世代の最上位モデル「RTX 3090 Ti」のCUDAコア数10,752基を大きく上回っている。重量級のゲームを4K解像度で軽く動かせるモンスターGPUだ。
「Shader Execution Reordering (SER)」によってレイトレーシング操作のシェーダーパフォーマンスが最大3 倍、ゲーム内のフレームレートが最大25%向上する点が特徴。追加で高品質なフレームを作成して滑らかな描画を可能にする「DLSS3」機能もあり、レイトレ環境下で高品質なプレイ画面を得られる。
▲これはファウンダーズエディションだが、各社の製品にはこれ以上の厚みがあるものも。
定格消費電力(TDP)は450W。前モデルであるRTX 3090(無印)のTDPである350Wから100W増加しているものの、RTX 3090の強化モデルであるRTX 3090 Tiとは同じ数値になるため、消費電力効率の良さを考えると順当に進化していると言える。性能向上を果たしながらも、定格消費電力は抑えられたモデルだ。
最新のAAAゲームタイトルを4Kで快適にプレイするための最良な選択肢であることは間違いなく、RTX 3090 Tiを2倍近く上回る性能の進化と消費電力効率の向上が素晴らしい。ユーザーにとって最大のネックは販売価格となるが、レイトレーシングを効かせた美しいプレイ画面と高フレームレートを簡単に両立できるぞ。
2.「RTX 4080 (参考販売価格約17万円〜26万円)」
RTX 3080の後継モデルとして誕生したグラフィックボードで、RTX 4090と同様に最大8Kまでの解像度をサポート。TDPは320Wとなっており、4090と比較すると130W低い。ブーストクロックは2.51GHzで、GDDR6X規格のグラフィックメモリを16GB実装している。RTX 4090の直下に位置するハイエンドモデルだ。
CUDAコア数は9728基で、RTX 4090の3分の2程度となっているが、前モデルであるRTX 3080の8704基からは増加しており、テクスチャユニット数と、描画処理で重要な役割を果たすROP (Raster Operations Pipeline)ユニットの数も順当に増加。ただしメモリインターフェース幅は256bitと少なくなっている。
▲RTX 4090の性能がかなり突出しているが、本モデルも立派なハイエンドだ。
グラフィックボードに必要な電力を供給する「補助電源コネクタ」に採用されているのは、RTX 4000台から新規導入された16ピンの「12VHPWR」で、現在電源パーツを製造しているメーカーが対応する製品を徐々にリリースしている。新規格ケーブルを用いるか、変換アダプターを用いる方法で運用することになるぞ。
RTX 3080の強化版モデルとなるRTX 3080 Tiと比較した際のゲーム描画性能差は、約1.5倍から4倍。特にレイトレーシングとDLSS(超解像パフォーマンスモード)を用いて4K解像度で『サイバーパンク2077』をプレイした際には、RTX 3080 Tiと比べて4倍の性能差を発揮するため、驚異的だ。
3.「RTX 4070/4070 Ti (参考販売価格約9万円〜16万円)」
アッパーミドル/ミドルハイモデルに位置付けられるグラフィックボードで、RTX 4070のCUDAコア数は5888基、RTX 4070 TiのCUDAコア数は7680基。どちらもGDDR6Xのメモリを12GB実装しており、サポートされるディスプレイの最大解像度は8Kまで。「Ti」が付くモデルがより高性能なのがNvidiaのルールだ。
RTX 4070 Tiは当初「RTX 4080 12GB」という名前で発表されていたが、Nvidia自身が名称が紛らわしいとして改名した経緯を持ついわく付きのモデル。RTX 4080は16GBのVRAMを持っているのに対し、RTX 4070 TiのVRAMは12GBと4GB少なく、ビデオメモリを大量に消費するゲームのプレイでは不安が残る。
▲アッパーミドル/ミドルハイの立ち位置にあるRTX 4000台シリーズの中間モデル。
RTX 4070 Tiは、RTX 4080と比較するとCUDAコア数やRTコア数、Tensorコア数、メモリバス幅、ROPの値がそれぞれ約20%削られている計算になり、この部分と値段の差をどう捉えるかで選択肢が変わってくるはず。TDPは無印の4070が200Wで、「Ti」付きモデルが285W。RTX 4080よりは下がっている。
ブーストクロックは無印が2.48GHzでTiが2.61GHz、メモリインターフェース幅は共に192ビットで変わらず、クロックが高い分だけTiの消費電力が増加している。突出した違いはCUDAコア数で、無印よりも高い値段になっているTiを選ぶ際の強力なセールスポイントと言えるかもしれない。予算に応じて好きな方を選ぼう。
4KよりはWQHD(2560×1440)解像度のモニターを持っているPCユーザーにおすすめできるグラフィックボードで、VRAMを大量に消費してグラフィックを描画するタイプのゲーム(例『バイオハザード Re:4』はVRAM16GB推奨)をプレイするのでなければ、非常に安定したプレイ体験を味わえるはずだ。
4.「RTX 4060/4060 Ti (参考販売価格約5万円〜9万円程度)」
2023/5/19に発表されたRTX4000台の新作モデル。「Ti」にはVRAM8GBと16GBの2モデルが存在し、RTX 4060 Ti(8GB) は5月24日から、RTX 4060 Ti(16GB) と無印のRTX 4060は7月からそれぞれ販売が開始される。RTX 4070/4070 Tiよりも多いVRAMを実装する4060 Ti(16GB)が気になる製品だ。
CUDAコア数はRTX 4060 Tiが4352基で、無印のRTX 4060が3072基。ブーストクロックはTiが2.54GHzで、無印は2.46GHz。メモリインターフェース幅は共に128ビットとなっている。本製品は主にフルHD解像度でのゲーミングをターゲットにした「ミドルクラス」の領域をカバーするグラフィックボードだ。
▲RTX 4070の12GBを上回る16GBのVRAMを持つRTX 4060 Tiも存在。
消費電力に関しては無印が115Wで、Tiモデルは160から165Wとなっており、その差は大きい。省電力で済む無印モデルは小さなPCケースでも運用できる利便性の高さが光る製品で、Tiモデルは価格差がある分、性能もパワーアップさせたモデルと言える。特に7月登場のVRAM16GB搭載モデルは目玉製品となるだろう。
こうして俯瞰すると、ウルトラハイエンドからきれいに並んだ製品ラインナップになっており、基本的にスペックと値段が正比例している点も分かりやすいが、ネーミングでひと悶着あった挙げ句、下位モデルよりも少ないVRAMに収まってしまったRTX 4070 Tiの中途半端な立ち位置が目立つ。これだけは残念だ。
グラフィックボード選びの注意点
前項で述べた通り、近年のNvidiaはファウンダーズエディションが出回る機会が少なく、一般的にはASUS、EVGA、Gigabyte、MSI、玄人志向、GAINWARD、ZOTAC、ELSAなどのパートナー企業が独自設計のパーツとデザインを用いて製造した製品を、店頭・通信販売の手段で購入することになる。
▲ASUSの「ROG Strix GeForce RTX 4090 24GB GDDR6X White OC Edition」。
各メーカーがオリジナルデザインのグラフィックボードを製造する際に注力しているのは「冷却性能」「オーバークロック」「外見デザイン」「電源供給機能」などで、特にファウンダーズエディションよりもオーバークロックして性能を引き出す分野での競争が激しい。描画性能を他社よりも強力なものにすることが目的だ。
OCモデルを購入する場合には冷却性能に注目
今回ご紹介しているファウンダーズエディションはすべてファンの数が1つだが、市場に出回っている各社のグラフィックボードはオーバークロックを行っている関係上、冷却性を高めて快適に運用できるようにファンの数を増やしており、ここも注目ポイントと言える。冷やすことに特化した構造に注目しよう。
例えばASUSが販売している「ROG Strix GeForce RTX 4090」の場合、改良されたファンによって従来製品の23%以上効率的に風を内部パーツに送り込むことに成功しており、低温・低ノイズ・高性能を達成している。GPU温度が50℃以下の場合にはファンが停止するシステムもあり、静音性にも優れる点が特徴だ。
▲「ROG Strix GeForce RTX 4090」の分解図。冷却機構がしっかりとしている。
高負荷な状況にグラフィックボードを置いた場合、必ずファンが高速で回転を始め、それに伴って耳に聞こえる動作音も大きくなっていく傾向があるが、近年のグラフィックボードは冷却機構を効率化させることでファンの回転数抑制に繋がる努力を行っていることも多いので、静音性という部分で選ぶのもアリだろう。
PCケースの大きさには注意が必要
グラフィックボードにはローエンドからハイエンドまで幅広い性能を持つモデルが存在するが、すでにPCケースを所有しているユーザーは、グラフィックボードのサイズにも注意したいところ。基本的にハイエンドモデルほどカードの全長や厚みが増加し、専用のサポートで固定しないとヘタってくる製品も存在する。
大型のPCケースで余裕を持ってハイエンドなグラフィックボードを動かすことは問題ないが、ミニPCケースに上位モデルを詰め込んで運用することはあまり現実的ではない。サイズが合わずに物理的に入らないばかりか、例え入ったとしても排熱で内部がかなり加熱するため、長期的な運用が難しくなってくるはずだ。
▲ZOTACの「GAMING GeForce RTX 4070 Twin Edge OC ZT-D40700H-10M」。
筆者はこれまでに「GTX Titan(初代)」「Radeon RX 580」「Radeon VII」「Radeon RX 6800XT」のグラフィックボードを購入して使用してきた経歴があるが、いずれもミドルスペックからハイエンドモデルだったため、PCケースは大型のものを購入・利用してきた。真夏になると排熱面で不安があったためだ。
初心者ユーザーがいきなりハイエンドなグラフィックボードを手に入れる事自体は問題ないが、PCケースとのクリアランスや相性は大いに気にしてほしい部分。各メーカーはグラフィックボードの寸法や重量を必ず記載しているので、「ケースに入らなかった」という悲劇だけは回避したい。大型ケースであれば安心だ。
▲エアフローには吸気と排気という側面がある。どのように空気が流れるか確認しよう。
自作PCはマザーボードおよびCPUとCPUクーラー、メインメモリおよびグラフィックボードと電源パーツ、ストレージとPCケースで成り立っているが、これらの相性もあるため、購入を決めたパーツを軸にその後のパーツ選びを展開していくと、理に適った効果的な自作PCを生み出せる。相互関係にも注意していこう。
PCモニターの解像度で選択するのもアリ
モニターの解像度もグラフィックボード選びに関わるポイントになってくる。WQHD解像度を持つPCモニターを利用したい場合にはRTX 4070/4070 Tiを、4K解像度の場合には4080もしくは4090を選択するのが現実的で、フルHD解像度のPCモニターを利用する場合には、4060/4060 Tiが向いていると言える。
▲MSIの「GeForce RTX 4060 Ti GAMING X 8G」。フルHD解像度向けの製品だ。
各社で大きく異なっているデザインやRGB装飾などの要素も大切な部分で、アクリル窓から各種パーツが見えるPCケースを持っている場合、グラフィックボードがプレイ中にカッコ良く発光するのを見ることは「所有感」を満足させてくれる。無論ストイックに発光しないパーツを選んで組んでいくのも自由だ。
繰り返しになるが、グラフィックボード選びで大切にしたいポイントは、各メーカーが力を入れているオーバークロック性能と冷却システム、そして筐体デザインとサイズ。プレイする解像度に応じて選択肢が変わり、そこに「予算」という大命題も入ってくる。お財布と相談しながら最適なグラフィックボードを見つけてほしい。